産廃処分場計画ー富山県を「関係地域」としないような書き振りは恣意的
昨日8/2午前、日本共産党呉西地区議員団が、高山市荘川町の六厩(むまや)地区に建設が計画されている産業廃棄物処分場建設にかかわる、意見書提出についての記者会見を行いました。私も同行しました。
株式会社アルト(以下、「アルト」)が提出した「方法書」(事業計画や環境への影響を評価したもの)は、岐阜県環境影響評価条例7条にしたがって提出したものです。党議員団は、同条例が示す手続きに従って、「関係住民」(の自覚のもと)、意見書を提出することになりました。
この意見書が提起している問題点・疑問点などに対し、アルトは誠実に回答や対応策をまとめ、岐阜県知事にその所見を提出するという流れになっていきます。
そのわが議員団が提出した「意見書」は、こちらを参照していただくとして、その内容とは別に、アルト提出の「方法書」に目をとおしてみて、私個人として疑問に思った2点を備忘的に書いておきます。(疑問点は、まだありますが、差し当たっての指摘です)
1、富山県の地域を、「関係地域」にしないような意図がうかがえる
同条例7条では、「方法書」に記載すべき事項が定められており、その中に、この事業に関わって、「対象事業が実施されるべき区域およびその周囲の概況」や「関係地域の範囲」などを記すことが定められています。(下枠)
一 事業者の氏名及び住所(法人にあっては、名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地。以下同じ。)
二 対象事業の名称、種類、目的及び内容
三 対象事業が実施されるべき区域及びその周囲の概況
四 関係地域の範囲
五 調査等の項目及び方法
六 その他知事が必要と認める事項
しかし、アルトが提出した「方法書」には、「四、関係地域の範囲」が記載されていないのです。
ちなみに、同条例2条では、「関係地域」とは、「事業者(=アルト)が実施しようとする地域及びその周辺地域で、当該対象事業の実施に伴い環境に著しい影響を及ぼす恐れのある地域」としています。
さらに、その地域に住所を有する者を「関係住民」といい、
その地域を管轄する市町村長を「関係市町村長」、
としています。
岐阜県高山市の荘川町・六厩地域はもちろん、その下流部の岐阜県白川村は関係地域であることは明白です。さらに川を下って富山県南砺市、砺波市、小矢部市、高岡市、射水市も、この庄川の水を飲料水や工業用水、農業用水などの水源として利用しているわけですから、「環境に著しい影響を及ぼす恐れのある地域」であることも明らかです。
本来、関係地域の範囲は、高山市**地区とか、白川村**地区などと、地域を特定した形で記述する必要があるのではないかと思います。しかし、そういう記述が一切ないのは、解せません。
富山県も明らかに影響を受けるのに、「関係地域」にならないということは、納得できません。
このアルトの「方法書」は、富山県民の住む地域を「関係地域」から恣意的に除外していると思います。
「関係市町村長」に方法書が送付されたことになっているのですが、関係市町村長に、富山県内の市町村長が含まれているという情報は一切ありませんので、おそらく、アルトは私たち富山県の地域を「関係地域」とは規定していないのだろうと思います。
もし、南砺市や砺波市をはじめとする富山県西部の地域が「関係地域」となれば、事態は大きくかわるでしょう。
岐阜県環境影響評価条例11条に基づいて、岐阜県知事は「関係地域」を管轄する富山県知事と環境影響評価の実施に関して協議することになるからです。
富山県内のいずれかの地域が「関係地域」になるかどうかが、この問題に関わる富山県民の影響力の大小に決定的な要素となると思います。
だから、私たち富山県民は、「わがまちこそが、関係地域だ!」と強く主張しなければなりません。「意見書」は8月5日まで、アルトへメールや郵送等で提出することができます。
2、庄川上流は環境基準の分類で最も高いランクなのに、その最上流部の支流の六厩川が基準が当てはまらない河川=規制されないところだ、と言いたいようである
環境基本法16条では、「人の健康を保護し及び生活環境を保全する上で維持することが望ましい基準」を定めています。
そのうち、河川に関しては、「生活環境の保全に関する環境基準(河川)」があり、
①利用目的の適応性を基準にした「項目類型」が、「AA」(水道1級)から「E」(工業用水3級)まで6段階の水質基準ランクを定めています。
ちなみに、富山県は、庄川上流(砺波市の雄神橋より上流)を、最高ランクの「AA」としています。
②また、水生生物の適応性を基準にした「項目類型」があり、「生物A」から「生物特B」まで4段階で水質基準ランクを定めています。
ちなみに、富山県は、庄川上流(雄神橋より上流)を最高ランクの「生物A」としています。
それぞれの利用目的にあわせた類型ですが、いずれも、水質のランクをそれより悪化させてはならないというのが環境基本法の目指すところとなっています。
ところが、です。
株式会社アルトの「方法書」によると、建設予定の廃棄物処分場から流れ出した処理水を放流する河川=六厩川は、なんと!
生活環境の保全に関する環境基準の「類型の指定はない」河川だ
と書いてあるのです。
富山県は、水質基準の最も厳しいランクとして庄川上流域(雄神橋上流)を位置付けているにもかかわらず、その最上流部に流入する六厩川は、《その基準に従う義務がない川である》ということになってしまっているのです。
そんなおかしな話はあるでしょうか。
なお、環境省HPによると、
環境基本法16条に定める基準「第1 環境基準」の「2 生活環境の保全に関する環境基準(2)」に「水域類型の指定を行うに当たっては次の事項によること」として、
*水質汚濁に関わる公害が著しくなるそれがある場合や、
*水質汚濁源の立地状況を勘案することや、
*当該水域の水質が現状よりも少なくとも悪化することを許容することとならないよう配慮することなどが、示されています。
六厩川の近傍で産廃最終処分場をつくれば、今までの六厩川の水質より「少なくとも悪化する」可能性が高まるわけだから、そのようなことを「許容することとならないよう」配慮することが求められるのです。よって、六厩川の水域類型指定が必要になると思われます。
*さらに、対象水域が2つ以上の県にまたがる水域の一部であるときは、「水域の類型の指定」は関係都道府県知事(岐阜県と富山県知事)が同一の日付で行うことを原則とすると書かれています。
富山県知事が、六厩川を「水域類型」指定すべきではないかと、岐阜県知事に申し入れるという手は、理屈としては可能ではないかと考えます。
以上、気づいた点を書きましたが、限られた資料からの推測もふくまれた個人としての見解です。さらに調査を進めていきたいと思います。(誤字脱字や表現を修正しました・8月6日)