2024年8月2日

富山県民の水道水源である庄川上流に産業廃棄物処分場を建設するな

投稿者: hi_sakamoto

8月1日、日本共産党呉西地区議員団7名は連名で、以下の「意見書」を提出しました。

岐阜県高山市荘川町の六厩(むまや)地区に、富山市水橋の株式会社アルトが建設を計画する「産業廃棄物処分場」について、現在岐阜県側において、岐阜県環境影響評価条例にもとづいて、建設の可否を検討する手続きに入っています。環境破壊を防止する観点から、一定の規模・基準を満たす事業計画について、厳しい審査が行われることになっており、その手続きの一環として、事業者側(アルト)が岐阜県に対して提出した「方法書」について、関係住民から「意見書」を提出することができるようになっています。この意見書にしめされた関係住民の疑念や質問等に、事業所は誠実に応えなければなりません。(同条例7〜9条を参照)

 

意見書は以下です。


事業計画に係わる意見書

令和6年8月1日

氏名                    住所

境 欣吾(砺波市議)          富山県砺波市大門595

中島 満(南砺市議)          富山県南砺市城端1109-21

金平 直巳(前高岡市議)      富山県高岡市佐野349-5

高瀬 充子(前高岡市議)      富山県高岡市大手町13-1

根木 武良(射水市議)        富山県射水市二口1290

津本二三男(前富山県議)      富山県射水市太閤山9-1-1-C-104

上田 由美子(小矢部市議)    富山県小矢部市道明17

対象事業の名称

六厩クリーンセンター最終処分場整備事業(仮称)

意見書

・庄川は南砺市、砺波市、高岡市および射水市35万人の水道水源になっている。また小矢部市では少なくない市民が庄川からの地下水を飲用している。水道の浄水場では凝集沈殿、砂濾過、塩素消毒といった水処理が行われるが、処理可能なのは降雨時などの河川水の濁りと細菌であり、水に溶解している重金属などは処理不可能である。活性炭処理を追加しても浄水処理には限界がある。そのため水道水源は可能な限り保全すべきで、産業廃棄物の埋立処分場は建設すべきではない。

また、農業用水源としても利用されており、同様に可能な限り保全すべきある。例えば、イタイイタイ病の原因となったカドミウムは、河川水中の濃度がたとえ環境基準(0.003mg/L)以下であっても、自然界値(0.0001mg/L程度)を超過すると土壌への蓄積が見られるという。

さらに、庄川は、イワナ、アユ、サケなど内水面漁業の漁場となっており、高岡市福岡の養鯉業や砺波地方の酒造業、飲料品業など伝統・地場産業も庄川の恩恵を受けている。処分場放流水による生態系への影響と風評被害による経済的損失が懸念される。

・今回は管理型の埋立処分場が計画されており、浸出水は排水基準まで処理して放流するとなっているが、規制される水質項目はごく一部である。そのため、基準値の定められていない有毒物質には対応できない。排水基準自身は原則として環境基準の10倍で、河川に放流して希釈されるという考えに基づいているので、清流を汚染することになる。希釈されても下流の土壌や生物(人を含めて)に蓄積することもありえる。

・受け入れる産業廃棄物の種類は、廃棄物処理法で分類されている産業廃棄物20種類のうち17種類と特別管理産業廃棄物の廃石綿等とされており、多種多様な産業廃棄物を受け入れることになっており、水銀をはじめとする重金属や廃石綿など非分解性で、有毒な物質が含まれている。また、ダイオキシン類、有機塩素系農薬、最近新たに問題になっているPFAS(有機フッ素化合物)のように非分解性で、残留性があり毒性の強い化学物質も混入してくる可能性がある。さらに、維持管理計画にあるような荷台からの目視とマニフェストとの照合で搬入不適物を確認することは困難である。

・今回の埋立処分場への埋立は26年間で終了し、埋立終了後、浸出水の水質が排水基準の設定されている項目について基準値以下になれば管理を停止し、廃止する計画になっている。しかし、ここは水道水源、農業用水源である。重金属など非分解性物質が埋め立てられていれば、未来永劫にわたって処分場の管理が必要である。事業者が撤退すれば地元や下流の自治体の税金で監視・管理を継続する必要が出てくる。

遮水シートの劣化による浸出水の漏洩やコンクリート構造物の寿命も問題になる。

・地震や最近の異常気象・豪雨を考えると、埋立処分場の構造安定性、洪水・土石流・地滑り・雪崩対策が重要である。

降雨に関して言うと、集排水施設や洪水調整池などの設計に使用されている降雨強度は10年または30年に一度起こる確率の降雨である。逆に、平均すれば10年または30年に一度は想定外の降雨により、洪水・土石流・土砂崩れが起こり、処分場が崩壊するような災害が起こる可能性があるということである。

また、事業計画書で検討されている活断層(牧ヶ洞断層)は埋立地に近い上に、管理棟・管理用道路・配管・覆土仮置場・土捨場など重要な施設の計画に影響を与える位置を通っている。この地域は活断層が多いにもかかわらず、庄川断層帯や跡津川断層帯など他の活断層については検討がなされていない。

災害は必ず起こると考えて計画すべきである。事業計画書の災害対策は、小規模の災害は想定していても、埋立処分場が大規模に崩壊するような災害は想定していない。

・以上、水道水源・農業用水源として庄川の水を利用している富山県西部の各市は岐阜県環境影響評価条例でいう「関係地域」であり、そして水源流域の保全のため、産業廃棄物埋立処分場の建設計画は中止すべきものと考える。