2020年12月20日

エコカーもいいが、自動車をどう減らすかがより重要では①

投稿者: hi_sakamoto

世界からは日本の気候変動対策があまりに消極的で、国際NGO団体から不名誉な「化石賞」に選ばれるなどつよい批判にさらされていました。菅内閣がようやく2050年に温暖化ガス実質排出量ゼロ(カーボンユートラル)を宣言したということで、それは追い詰められての宣言だとはいえ、他国並みに宣言したことだけは評価したいと思います。ただ中身はどうかというと、石炭火力発電を温存拡大するとか原発依存など問題だらけです。言うだけならタダですが、言った以上はちゃんとやれよという国民的圧力が大事です。

日本の4輪車自動車保有台数は7800万台

別の報道では、ガソリン車を2030年代半ばまでにゼロにし、一方2025年までにFCV(水素を使う燃料電池車)を20万台、30年には80万台にするのだそうです。2019年の4輪車保有台数が7800万台なので、2030年にFCV比率は0.1%という計算になりますが、ちょっと目標が少なすぎはしないかと思います。(画像の表は自動車工業会のHPから)

エコカーが万能薬ではないことは明瞭

ガソリン車を無くしていくことや、エコカーの割合を増やすのは当然のこととしても、それが万能薬になるわけではありません。

ハイブリッド(HV)車や電気自動車(EV)、FCVにすれば一面ではCO2排出を減らせるけれど、「環境に優しい車だから」といって走行距離を増やしたり、自動車保有台数を増やしたり、自動車単体の大型化・高級化をすすめたり、つまり自動車依存度をさらに高めるような変化をもたらすなら、CO2排出など環境負荷は逆に増大さえしてしまいます。

そもそも製造から使用、廃棄という全過程を見た場合はどうなのか。ハイブリッドや電気自動車には高性能な大型バッテリーが必要ですが、その製造には大量の希少資源(コバルト等)が必要となり、その採掘現場では環境に大きな負荷をかけながらしかも劣悪で低賃金、さらに児童労働への依存という深刻な問題を伴っており、手放しで喜べる現状ではありません。バッテリーには寿命がつきもので、廃棄や再利用処理時には高度で大掛かりな分解・再処理作業に多くのエネルギーが必要となるでしょう。自動車のボディや部品には鉄やアルミなど金属製品がたくさん使われ、その生産に膨大なエネルギーを使いますし、石油由来のプラスチックなど自然界で分解しない素材が大量に使われます。自動車が10年程度で廃車になればその廃棄の際にもエネルギーが必要となります。「夢のエコカー」といわれるFCVが大半をしめる時代が仮に到来したとしても、万々歳というわけにはいかないことは容易に想像できます。

私は、そもそも自動車の台数を今のままに(考えたくないのですが、さらに増やすことさえ!)しておいて良いのかという問題の方が、より重大な課題だと思うのです。

車依存から脱却するパラダイムシフトが必要

自宅から500メートル先のコンビニへ缶ジュースを買いに行く際に、徒歩でいくのか、1トンを超える鉄の塊に乗っていくのかを考えたら、いかに膨大なエネルギーを使っているかは明瞭です。体重60Kgの人一人が自動車に乗り、毎日毎日、通勤や通学に買い物にと利用し、渋滞にはまりガソリンを燃やし、エアコンを効かせた快適な室内でDVDや音楽を楽しむという、こんなスタイルが果たして良いのかということを問いたいと思います。

これまで自動車産業の製造・販売・成長戦略と、それと密接に結びついた国の交通・産業政策によって、自動車利用がどんどん便利になりました。道路を舗装し広げまっすぐにし、橋を広く丈夫にし、山をけずって高速道路を建設し、トンネルをぶち抜き、家には車庫が必ずつけられるようになりました。車があれば超便利な社会になりました。一方で公共交通機関がどんどん不便になっていきました。特に地方では列車、バスなどの利用者が減って赤字路線が増え、便数が減り、路線が減りました。その不便化がさらに利用者減を招くという悪循環をもたらしたのです。

クルマ社会づくりには国家としての明確な意思や政策があったのですから、公共交通機関の衰退も、車がないと不便な田舎生活も、政策的に作られたものなのです。時間をかけて車依存社会を作ってきたのです。しかし、これからはその逆のことを進めれば良いのです。ただし、急速にですが。

国としての、車に依存しない社会へのパラダイムシフト。これこそが今が必要な政策ではないでしょうか。

上記の表でみると、例えば自家用車は6200万台、国民二人に一人の計算ですがこんなに必要なのか。例えばこれを半減させたうえでバスを大幅に増やすとか、各地域で広がりつつあるカーシェアリングや乗合タクシー的な方策を思い切って進めることです。山村など高齢過疎地域での移動販売車網の充実も必要でしょう。そのための投資、政策誘導的な補助金の創設、いろいろな実践が求められます。

そうした努力を積み重ねできるだけ早く「車なんて持っていても無駄」と思えるような充実した公共交通網をつくることが強く求められると思います。

(長くなりすぎたので、続く)