2020年12月22日

エコカーもいいが、自動車をどう減らすかがより重要では②

投稿者: hi_sakamoto

クルマ依存から脱却するためにどんな公共交通のあり方が必要かを、JR城端線を例にして考えてみました。

城端を起点に終点高岡まで13駅。

画像のように城端線は最上流位置の「城端」から、最下流位置の「高岡」までの路線を川の本流とみなし、各駅は支流との合流点という位置付けで考えます。それぞれの駅からバス路線かタクシーかカーシェアかで放射状に支流が伸びて、さらに細かく分岐しながら面的に全居住地域を網羅していくイメージです(下図の赤線を記入してみました)。どんな交通手段を組み合わせるかは、その地域の実情に応じて柔軟に作れば良いと思います。最寄りの駅へどこからでもアクセスできる状態にし、城端線(本流)の列車本数を大幅に増やして便利にするのです。そして、城端線は「1時間に1本しかなくて不便」ということを改めるのです。さらに市街地では、自転車と公共交通が最優先とされ、場合によっては自家用車の乗り入れは完全に禁止ということもありえます。あえて車の利用を不便にし、歩行者や住民がゆっくりと静かに生活できるような都市設計も必要でしょう。

城端線の各駅から全地域へ支流のように公共交通の網が作られるイメージ

ちなみにそのような思い切った交通政策をすすめる都市は世界のあちこちにあります。下のリンクでは、街への自動車乗り入れ禁止に踏み出したバルセロナ(スペイン)や、ハンブルグ(ドイツ)、オスロ(ノルウェー)のまちづくりの実践が紹介されています。

バルセロナでも自動車禁止の動き、世界の都市で広がる「car-freeムーブメント」

 

下の「北陸中日新聞」(12月11日)記事画像は、国内でのMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)という新たな仕組づくりの挑戦を報じています。スマートホンの普及を生かして、自動車など移動手段の資源を大幅に減らしながら、その少ない資源を市民の交通需要に応じて適切に満たしていくという試みです。画像新聞記事の「A to Z」の見出しの下にある囲みの解説では、MaaSについて
「自家用車への過度の依存をやめ、公共交通機関への誘導を図る政策」
「(交通手段を)所有から、必要に応じた利用への転換を図る」とあり、
学ぶべき点が大いにあるでしょう。

「所有から、必要に応じた利用」というのは、今日でいうところの音楽や映画の配信、パソコンソフトのようなサブスクリプションの商売方法と同じです。いまではCDもDVDもソフトパッケージも「所有」せず、月々の定額支払いでいつでも利用したいときに「利用」して、やめたければ支払いを停止すれば良いというのが主流になりつつあります。車を持たなければその維持費用もかからないし、使わない間遊ばせておくという無駄もなくなり、資源の有効活用ということになります。

MaaSの取り組みを紹介する北陸中日新聞(12月11日20面)右

MaaSの取り組みを紹介する北陸中日新聞(12月11日20面)左

また、富山県朝日町ではこの夏、地域の個人と公と民間が連携して新たな「乗り合い」スタイルの公共交通確立への模索が始まっています。

朝日町が実証実験を開始した「ノッカル」事業を報じる朝日新聞(web)

下記リンク「SUUMOジャーナル」に詳しいレポートがあります。

ご近所さんを車に乗せる「乗合サービス」、富山県朝日町の交通の切り札に https://suumo.jp/journal/2020/10/30/175846/

高齢化で運転免許を返上する人が急速に増えていきます。交通弱者、移動手段を持たない高齢層が県内でもっとも急速に増えている朝日町が、止むに止まれぬ現実の中で歩みだした挑戦ですが、これは一人朝日町の問題ではなく近い将来の富山県内全ての自治体が直面する問題です。この問題はクルマ依存社会へと邁進してきたこれまで政策の明らかな弊害であり、全国共通の問題なのです。解決のためには小手先の対策ではなく、国の方策としてクルマ依存社会からの脱却、大胆な転換が必要だということです。

(まだ長くなりそうなので、続きます)