ポスト資本主義と南砺市エコビレッジ構想(上)
資本主義の制度のもとで支配の側に立つ者の口から「新しい資本主義」なる言葉が発せられるところに、今日の資本主義の限界性が表れていると思います。
「いや、資本主義のままで大丈夫だ」というのであれば、何故わざわざ「新しい」資本主義などと言わなくてはならないのかということになります。資本主義のもとで生み出された諸問題〜格差と貧困の拡大、地球気候危機の進行など〜を打開する見通しがないなかで、資本主義に変わる道、社会主義へ道が模索され多くの若者たちが新しい世界を見出そうとしている時、資本主義のもとで甘い汁をすっている者たちは必死で「アップデートした資本主義によって、今とは違う新しい社会が実現できます。どうぞ安心してください」と、そうでも言わないとダメなところに追い詰められているのだと思います。
北日本新聞の(1月22日付)13面でも「資本主義 加速か減速か」という記事を載せていました。読売新聞でも新年早々から「岐路の資本主義」と題して5回連載が行われていました。
コロナ感染拡大のもとで格差が一層広がっている事実はもう説明するまでもありません。そして資本主義というシステムがこうした地球規模の困難に対してなんら有効な処方箋を導き出せないという現実があるからこそ、「限界の」資本主義だとか、「岐路に立つ」資本主義だとかの表現で語られるのではないでしょうか。
だから、ポスト資本主義とはどんな社会か、これが今後一層人々の関心事になるに違いありません。
そんな中、昨年末にたまたまふらり立ち寄った本屋さんで山積みにされていたのが、
「『土徳の里』の挑戦! エコビレッジ そしてSDGs 〜21世紀に生きる君たちへ〜」
という書籍でした。「株式会社つなぐ南砺」編です。
Amazonで調べてみても、ISBNで検索しても書籍名が出てこないので、一体どういうことかと思い出版元へ電話で問い合わせてみたところ、Amazonなど一般のネット販売では取り扱っておらず、富山県内の一部大型書店で取り扱い、南砺・砺波方面ではほとんどの書店に置いてあるということでした。印刷は3千冊だそうです。
唯一ネットで購入できるのが、出版元である株式会社シー・エー・ピーさんのサイトです。オンライン利用や県外の方はこちらをご利用ください。
【Takt 富山県のおすすめグルメ、楽しいイベント情報が満載。日刊オンラインタクト】の「オンライン購入」から辿ると購入することができます。ぜひ多くの方々に手に取っていただきたいと思います。
同書の直リンクは、https://takt.thebase.in/items/52846022 です
↑にあるように、
「富山県南砺市内で志を持った市民(志民)と行政が連携し、2011年から取り組ん でいる「南砺市エコビレッジ構想」。エコビレッジ構想の目指すところ、は SDGsと同じく、地域の人、物、文化、お金などが循環しながら誰一人取り残さ ずに幸せなまちづくりを目指すこと。その取り組みを紹介する。」
内容は後日の投稿で触れますが、ざっくり言うと、
資本主義によって(さらには今日の新自由主義の経済社会作りによって)、有り余るほどのモノにあふれる「豊か」でスピード感ある社会が出来上がった一方で、人と人が互いに力をあわせて形作ってきた共同体の営みがどんどん崩されてしまい、過疎化や農林漁業の衰退で社会の存続すら危うくなっている中、カネやモノや効率ではなく、人を1番に大切にする社会をもう一度取り戻そう、そのために地域にある力を伸ばし地域内循環・地産地消型の社会を取り戻そうという「エコビレッジ構想」にもとづく実践が南砺市で取り組まれ、いまそれが少しずつ成果をあげ始めている。(すごい要約)
これは、もちろん資本主義という枠内での取り組みではあるのですが、内容や方向性そのものは、間違いなくポスト資本主義の社会づくりの重要なモデルになるだろうと感じたのです。
ここには資本主義を肯定的にとらえる中で、資本主義そのものを乗り越える社会(資本主義の否定)を見いだすという、マルクスの社会の捉え方が思い出されます。
志位委員長が、日本共産党の創立99周年記念講演会で語った部分が詳しいので紹介しておきます。
「肯定的理解」「必然的没落の理解」――資本主義の生成、発展、没落の法則を明らかに
みなさん。『資本論』の全体をつらぬく根本的立場は、資本主義社会が、永久に続くものではなく、人類の長い歴史のなかでみれば、“一時的、経過的な社会”であることを明らかにしたことにあります。そのことをマルクスは『資本論』第二版への「あと書き」で、次のように表現しています。
「この弁証法は、現存するものの肯定的理解のうちに、同時にまた、その否定、その必然的没落の理解を含み、どの生成した形態をも運動の流れのなかで、したがってまたその経過的な側面からとらえ、なにものによっても威圧されることなく、その本質上批判的であり革命的である」
ここで「現存するもの」といっているのは資本主義社会のことです。
ここでいう「肯定的理解」とは、資本主義が、人類の歴史のなかで、どのような役割を果たし、社会にどのような進歩をもたらしたのか、そのことを理解するということです。
「必然的没落の理解」とは、資本主義社会が、その発展のなかで、どのような矛盾や危機を生み、社会を変革する諸条件をどのようにしてつくりだし、どのような新しい社会に交代するのか、そのことを明らかにするということです。
こうして資本主義社会を、より高度な社会に交代する必然性をもった社会であること、すなわち、その生成、発展、没落の法則を明らかにしたこと、ここにこそ、『資本論』の根本的立場があり、その革命的真髄があります。
もっと荒っぽく言うと、社会主義・共産主義の社会を切り拓く「芽」が、私たちのすぐ近くに、「南砺市エコビレッジ構想」という形で存在しているのではないかということなのです。
(下)に続く(予定)。