2022年2月12日

相当にヤバいこの国をどうするのかー本田由紀さんの分析に学ぶ

投稿者: hi_sakamoto

「しんぶん赤旗」の1月1日号で、志位和夫委員長の新春対談に登場したのが本田由紀さんでした。昨年の総選挙を前に、本田さんが日本共産党のことを表現するなら、「ぶれないのに柔軟、強いのに優しい、理知的なのに温かい」と表現され、日本共産党界隈ではこの言葉が大変ヒットしたのでした。

その本田さんが出版された『「日本」ってどんな国? 国際比較データで社会が見えてくる』(2021年10月10日、ちくまプリマー新書)に注目です。本のカバー裏面には、「家族、ジェンダー、学校、友人、経済、政治・・・日本社会のさまざまな面を世界各国のデータと比べてみると、今まで『当たり前』と思い込んでいたことが、実は『変』だったと気づく。日本がどんな国なのか、一緒に考えてみよう。」とあります。書名にある通り、さまざまな統計データを用いて、いかに日本社会が他国に比べたち遅れ、ガラパゴス化した「ヤバい」国なのかといったことを丁寧に解き明かし、さらにどのようにすればこの現状を打開できるのだろうかということを提起しています。

その著書の章立てにそって、【本田由紀のヤバい日本をあぶりだす!】と題した池田香代子さんとの対談動画が7回シリーズで公開されていることを最近知りました。デモクラシータイムズのYouTubeチャンネルの制作です。

動画は7本、それぞれ1時間程度あるのでかなり気合を入れてみなければならないかもしれません。私の場合、スマホにワイヤレスイヤホンを接続して、家事をしながら、寝床で、トイレで、お風呂で(スマホは防水対応)などなど画面にとらわれることなく音声を聴いていましたので、それほどの負担ではなかったかと思います。

聞いていてついつい本田さんの言葉(または趣旨)それだ!とガッテンしておりました。気になった言葉を順不同に紹介します。

「個人が粘土に溶け込んで1つの塊になってしまい、その周りをティッシュペーパーがまとわりつくような、戦後日本型循環モデルはもうやめよう。葡萄の房のように一人一人の粒立ちをつやつやはっきりとさせるようなジョブ型雇用を増やすことが大事」

※日本型雇用モデル=没個性、個人の能力の発揮よりみんな一緒くたにしてダラダラ仕事をする。その周りに不安定な非正規雇用労働者が雇用の調整弁として便利に存在しているという古臭い雇用のあり方は、もうやめにしよう。一人一人の専門性、能力が評価され、労働者が葡萄の房のようにしっかり結びついた雇用のあり方に切り替えよう、という意味のことを語った言葉です。

 

「上目遣いなんてもうやめだ!」

「教員が政治的意見表明をすることによって実は、子どもたちの政治的関心を高めることができるという調査があるんです!」

※生徒は、政治に対して自らの考えを述べる教師の姿をしっかりみている。そして、自分だったらどう考えるだろうか・・・と政治にたいする態度を自問するようになる。そうやって政治的に関心を高めるのである。逆に、教師が両論併記的な態度をとり、「中立」を装う「事なかれ主義」の無難な振る舞いをしていれば、生徒たちも政治や社会問題に関心をもつことは、「面倒なことであり、手を出さない方がよい」ことだと捉えるようになり、政治への無関心を作り出してしまうだ。

「圧力釜のようにストレスが溜まっている学校」

ー子供は学校で・塾で勉強してさえいればいい、父親は外で働いて稼いでくるだけでいい、母親は家で家事全般をこなし子供の世話夫の世話をすれば良いーこのような役割分担があり、そこで必死になって頑張っていれば順調に回っていた時代が確かにあった!しかし、今やそんなことでは回らない社会になっているのに、相変わらず子どもたちは昔ながらの領域で圧力に耐え忍んでいる。

「これほどまでに国に痛め付けられているのに、なぜそんな『国を愛する』といった感情が強まるのか?・・・それは、自分の『誇り』を国ぐらいにしか見い出せないからではないか? 国がどんなにグダグダでも、良いものとして『見なしておきたい』のではないか。本当に国を愛するというのは、自分の国のどこが悪いのか、どこが良いのかをはっきりさせて、悪いところは直していくという態度にあるのではないか。」

そして一番興味深く、この現状をどうするかという本田さんの決意にも似た言葉は次のようなものでした。

このヤバい日本の現状を変えるには「理想論と言っても良いほどの大掛かりな改革」が必要ではあるが、しかしそうした改革をしなければならないことは客観的な現実。だからこそあきらめずに、

「その理想にむかって、にじり寄っていくような努力が必要」

と言っておられたことです。

この構造的問題から生じるさまざまな理不尽な現実を、一朝一夕に解決することはできないかもしれません。しかし、大局的視点を堅持しながら一歩一歩変えられるところから着実に変えていく、選挙で政治を変え政策を変更していくという、時間はかかるが着実な改革の積み重ねこそが大事だと思うのです。

ぜひ動画をご覧ください。

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