スマホに時間と人間性が奪われるということー教育行政での対応の遅れが心配
2月17日午後、中学校保健委員会にPTA代表として参加してきました。当日都合がつかない会長の代理で副会長の私が参加したというわけですが、テーマが「メディアを健康的に利用しよう」という、もう数年来の「これしかないでしょ」というテーマです。
学校医の皆さんを講師にして、スマホ・タブレットなどの利用についての問題を考える学習で、非常に考えさせられる1時間でした。
学校が生徒や保護者から集めたアンケート集計資料では、子どもたちの半数は、1日のスマホ利用は2時間未満なのですが、裏を返せば半数以上は2時間以上、多い人は4時間以上もスマホ画面を見続けているという結果が紹介されました。生徒たちのスマホ利用は、動画やゲームなど無料で提供されているものがほとんどです。
なぜ長時間利用してしまうのか?・・・それは次々と興味ありそうな動画が出てきて、目が離せなくなる仕組みになっていること、ゲームでは場面が進むにつれてアイテムを購入したくなるように仕向けられ、無料漫画は次が見たくなる場面で「この先は有料」と出てくる仕組みです。そうやって、のめり込んでいく作りになっており、手放せなくなる=依存症を生みやすいのです。ネトゲ依存です。そのことに注意を喚起し、スマホの利用時間をコントロールできるようにすることが大事だと強調されました。
学校医や担当の薬剤師さんらから、メディアの利用についての問題点やアドバイスがありました。
冒頭からクイズが出されました。スマホを長時間使っていると睡眠に障害が出ると言われるのですが、そこでクイズです。
テレビは2時間みると睡眠に影響を与えると言われていますが、ではスマホは何時間で影響が出るでしょう?30分、1時間、2時間・・・
実は30分だというのです。わずか30分利用しただけで、睡眠に影響が出るというのには驚きです。
また、ブルーライトの影響については昼間では全く問題にならないが、夜間における使用では、影響がとても大きいとのこと。ブルーライトカットメガネの効能もほとんどないそうです。ディスプレイによる目の疲労は大変大きいために、適度な休憩が必要だと指摘されました。よって、何よりもスマホの利用時間を減らすことが肝要なのです。
もう1点、見過ごせないと思ったのは、ゲームなどによって脳の働きが抑制されるという指摘です。人間らしさを掌(つかさど)る前頭前野という部分の働きが極端に低下してしまうというのです。論理的思考、思いやり、感情コントロールなど大事な脳の働きをする部分が働かない。それはつまり、人間らしさの発現が弱まる懸念があります。
後日たまたまテレビをみていたら、ある番組で『スマホ脳』の著者アンデシュ・ハンセン氏が登場し、スマホ使用が子供たちに与える影響について語っていました。スマホ使用時間が長いと睡眠障害の発生が高まることや学習に明瞭に悪影響が出てしまうという話です。
そして脳の前頭前野の働きが極端に弱められるという話もありました。今回の学校保健委員会と同じことを言っていたのでハッとしました。
事例として、辞書(紙の本)で言葉を調べるのと、スマホで検索するのとでは、前頭前野の働きか如実に違ってくるのだそうです。
確かに、スマホで検索して出てくる文字や内容って、その時だけ役に立てば良いのですから覚えようとも思わない。
しかし、辞書ならマーカーを引いたり付箋をつけたり折り目をつけたり、また紙をめくる手触りや匂いといったものが複合的に折り重なって、調べた単語と一緒に記憶されるでしょう。頭を使い方が複雑になり刺激が大きいことが脳を活性化させることは想像に難くありません。
眼科の先生からは、スマホ普及にともなって子供たちの近視が当然増えていることと、さらに若年性老眼や緑内障の増加など、恐ろしい話をお聞きしました。先生は、「30分ほど画面をみつめたら、ぜひ20秒ほど遠い景色を見てください。それだけでも随分目が休まりますから」と強調されました。
最後に保護者代表が挨拶することになっていましたので、私は次のように発言しました(要旨)。
YouTubeでも無料ゲームでも「無料で楽しめる」というけど、「タダほど高いものはない」と思います。私たちは、その無料コンテンツや便利さと引き換えに失っているものがあるのではないかと思います。YouTubeがなぜ無料かといえば、数分に1回必ず広告が出る、その広告をできるだけ多く表示させることがYouTubeの利益拡大にとって最大の目的になるのだから、利用者をいかに動画に釘付けにさせるか、次々と新しい興味を引く動画を提案していくかが勝負になるのです。漫画だって、ゲームだってのめり込むような作りにして有料課金をさせようと仕向けるわけです。依存してもらわないとダメなのです。
今日の勉強で学んだように、利益を目的にする会社が「無料」でコンテンツを提供するが、実はそれと引き換えに私たちの時間と健康・人間らしさを奪われているのではないでしょうか。そのことをよくわきまえた上で、自分たちがスマホの使用をコントロールしていく力をつけなければならないのだと思います。大人の私自身もとても勉強になりました。
終了後校長先生らと懇談をしていた際、「そういえば、私たちの子供の頃は休み時間になると『遠くを見ましょう』といってやっていましたね。いつからやらなくなったんだろうねえ」との発言がありました。ICT教育が突貫工事で進んでおり、教科書の電子化が加速しているようです。お聞きすると、現在英語の教科書が100%電子化されているとのことで、つまり英語の時間は子供たちはずっと端末を視続けているということのようです。
私からは、昔よりもいっそう目の疲労が大きいはずなので、休憩時間には意識的に遠景をみる習慣づけを学校で努力していただきたいとお伝えしました。校長先生もそうしたいとおっしゃっていました。
学校教育現場では、鳴り物入りでICT教育=タブレット・パソコン導入と次々と新しい機材が押し寄せているのですが、それに対応する先生方のお仕事もついていけてないようですし、さらに生徒の端末利用による健康への悪影響についての調査や対応はほとんどできていないのではないかと感じました。
この問題は、教育行政の中で重大な課題になってくるだろうと思います。
【追記】
2022年3月8日の「北日本新聞」にスマホ等の利用による近視の増加について指摘された記事がありましたのでご紹介します。
近視になればメガネで矯正すれば良いという考えは古いそうです。低年齢のうちに近視が進行しないような対策をとる必要があり、目の適切な休息や屋外での遊びが大切だとしています。