2023年8月31日

利他と利己は一致しうる。

投稿者: hi_sakamoto

VOGUE japanというサイトの記事がたまたまフェイスブックで流れてきたので、読んでみました。なかなか興味深い内容で、参考になる内容だと思いました。(2021年12月の記事でした)

「仏教と脳科学の出合い。僧侶・伊藤東凌と考える、利他の心。【中野信子の脳探検】」

https://www.vogue.co.jp/lifestyle/article/brain-xpedition-nobuko-nakano-toryo-ito

記事の中では、自己と世界を分けることを認知する脳の部位(「方向定位連合野」)があり、その機能を低下させると、自分と世界が一体になった感覚になるそうです。そのことが瞑想状態に近いとのこと。

「脳は神を見るか 峰尾欽二 2015.4.8 わかみず会」というファイルがネット上で見つかったので脳部位をしめしたページをお借りして(スクショして)貼り付けます。URLは、以下です。

http://www.ivis.co.jp/text/20150408.pdf

自分と世界を分け隔てているからこそ、他人の利益を毀損しても自分の利益になる選択ができる=利己的な生き方が可能となるし、またそうだからこそ、その個人は生きていくことができるとも言えます。生きるか死ぬか、他人のことを構っていられない現状の時に、他人のこと(利他)考えることはそもそも無理です。

しかし、社会の生産力が発展すると(つまり、自分または自分たちの暮らしが安定し)、他人のことに目を配れる余裕ができ他人の利益も追求することができるようになります。自分以外の人々が豊かになることは、自分をとりまく環境がより豊かになることであり、結果自分にも利益がもたらされるということが実感できるようになります。自己の利益と他人の利益を同時に追求することは、現実的にも倫理的にも正しいということになっていくのです。

中野さんは、寿命が延びて他人と一緒にいる時間が長くなること、交通や情報通信が発達して、世界がもはや1つにつながるような時代にあって、他人との繋がりが昔に比べて大幅に強まっているのだから、自分の利益だけを追求することより互いに利益が得られるような方向へと関係性が強まっていく、つまり利己と利他が一致していくのだと強調されているのだと思います。

現実には、資本主義社会のもとで「新自由主義」が非常に強まっており、競争に勝ち抜く、出し抜く、ということが良しとされる力も強力に働いていることは見過ごすことはできません。

しかし、そうした新自由主義的社会の進行は、上記の共同的な人間同士の関係性の強まり、それにともなう利己と利他の一致と相反するものです。利己をとことん追求する新自由主義が猛烈に進行しているにも関わらず、それによって壊されている人々の人間性を回復するために、利他の精神で力をあわせていくという力もまた生まれているのです。

資本主義のもとて生まれているこうした矛盾を乗り越えて、個人の利益と集団の利益をともに追求できる社会を目指そうという考えは、実は共産主義の考え方です。利己と利他の統一というのは、実は共産主義の考え方と一致するのです。

利己と利他について、妻と「千代鶴」(千代鶴酒造合資会社、滑川市)を呑みながら語っていました。

ポッドキャストでも、「利己と利他と共産主義」を語りました。