戦前の日本共産党は7時間労働制を求めた
2021年5月2日

「6時間、いや、4時間働けばふつうに暮らせる社会」にしたいものだ。(下)

投稿者: hi_sakamoto

労働時間の短縮は、生産の無限の拡大に対する抑制にもなります。

労働時間が大幅に短縮され人々の生活に余裕時間が生まれれば【日本の場合なら、例えばサービス残業や風呂敷残業は当然のことながら、通常の「残業」がなくなってしまうだけで、生活に相当な余裕が生まれるでしょう】、24時間型の生活スタイルはそもそも必要なくなります。富山から東京に2時間台で移動しなければならない必要性も失われるでしょう。少ない休日に一斉にレジャーに繰り出して渋滞で時間を無駄にすることもなくなるでしょう。家庭菜園で自家消費の野菜を育て、冷蔵庫にいれて保存しなければならないこともなく、無農薬の食材を食すことができるでしょう。「レトルト食品は便利だ」と思えるような条件そのものが減ってきます。クリック一つで商品が翌日が配達されるという必要性もどんどんなくなっていくでしょう。手が汚れず持ち運びが便利な過重包装、プラスティック包装の必要性も急速に低下するでしょう。

安いものを大量に買っては、無駄に使って捨て続ける、こういう生活が過去の遺物になるのです。買い換えするのではなく、修理して長持ちさせるという本来の価値物の捉え方にもどるでしょう。100円ショップ的なもの、大食い選手権的なもの、食べ放題・飲み放題的な文化が終わりを告げ、人より「速く」「多く」といった観念にとらわれることが少なくなっていくのです。

マルクスは『資本論』の中で、人格の物件化(物象化)ということを言いました。本来社会とは、人間と人間が切り結ぶ関係をいうはずなのに、それが商品と商品との関係になってしまっていると。そして、人間が神を生み出したのに、その神に人間が支配されてしまうのと同じように、人間が作った商品の価格変動、商品市場の動きに人間が翻弄されてしまうのだと、哲学的な表現で、しかし本質を突いた表現で、資本主義を批判したのです。マルクスはこれを「商品の物神性」と表現しました。貨幣の物神性、資本の物神性という形で使われます。「カネやモノや資本を持てば持つほどよい」という観念に、人々が縛られてしまうのが資本主義です。

競争に駆り立てられる社会構造から抜け出せば、資本(企業)は無謀な生産拡大や、設備投資の回転速度アップの動機がなくなり、開発のスピードを競い合うことが至上命題になるような条件から解き放たれ、社会のあり方に巨大な変化をもたらすのではないかと思います。そのような夢のような改革をすぐに実現することは困難だとは思いますが、そういう努力方向で、法的整備なり経済政策の転換を始めることが現実的です。その1つが労働時間の抜本的短縮というわけです。

競争至上主義・利潤追求の生産に強力な制限をかけ、そこから決別する。有り余る生産から、必要十分な程度の規模へと生産規模(生産力)が落ち着き、エネルギーを必死で使うような(使わないと生きていけないような)社会から抜け出すことです。

労働時間の制限については今日、「8時間働けばふつうに暮らせる社会を」というスローガンです。この日本では、これが共通の政策目標になっています。1日には24時間しかない中で、世界の労働運動のスローガンは「8時間は労働に、8時間は睡眠に、8時間は自分のために」とされてきました。しかし、今や世界では「6時間労働」とか、「週休三日制」とかを目指そうと言い始めています。

仮に6時間労働制が世界のルールになれば、資本主義に相当な変化を起すことになるでしょう。しかし、資本主義の歴史が示しているように、標準労働日が6時間に短縮されたとしても、再び生産性のアップと労働密度アップが追いかけてきます。(13章の言葉を再掲)

「労働日の延長が法律によってきっぱりと禁止されるやいなや、労働の強度の系統的な引き上げによってその埋め合わせをつけ、また機械のすべての改良を労働力のより大きな吸収のための手段に転じようとする資本の傾向は、労働時間の再度の縮小が不可避となる1つの転換点にやがてまた到達せざるをえない。」(『資本論』第13章3節から)

マルクスが資本主義に代わる社会を展望した際に、決定的な要素だといったのがこの「労働時間の短縮」です。社会主義・共産主義の実現は、労働時間の抜本的短縮が鍵を握っているのです。

今日の気候変動や格差・貧困からの脱却の緊急性から考えても、やはり「4時間でふつうに暮らせる社会」くらいのイメージで、強力に労働時間へ制限をかけていくことが必要な時代に入っているのではないかと思います。

社会主義・共産主義では、労働時間が短くなる N高政治部

社会主義・共産主義では、なぜ労働時間が短くなるかー搾取がなくなり、浪費が一層される(志位和夫日本共産党委員長の「高校生に語る日本共産党」パンフから)

資本主義ではもうダメだということがはっきりしてきており、それを乗り越えた社会、社会主義・共産主義を求める若者の声が、アメリカをはじめとする世界で、そしてこの日本でも広がっていることは希望です。

1931年ん「赤旗」に戦前の日本共産党メーデースローガン「7時間労働」が

戦前の日本共産党メーデースローガン(1931年「赤旗」)

戦前の日本共産党の機関紙「赤旗(せっき)」の中に、1931年メーデースローガンがあり、そこには「7時間労働制」を求める一文が載っていました。赤線を引っ張ったところ。

(終わり)

「6時間、いや、4時間働けばふつうに暮らせる社会」にしたいものだ(上)

「6時間、いや、4時間働けばふつうに暮らせる社会」にしたいものだ(中)